哀しい美術館

名古屋へ移動する途中、静岡県立美術館へ立ち寄る。「風景るるる」という企画展が行われていて、照屋勇賢さんの作品も出品されていることを知ったから。しかし、いろいろとがっかり。それなりに歴史のある美術館で、いわゆるホワイトキューブになっていないというのはともかくとして、最初に出迎える'Notice - forest -'(照屋勇賢)の作品4点全部が見下ろす格好で展示されていて、袋の中の森に気づきにくいし、折角、鈴木理策さん(先日都写美の「熊野」を見たばかりだけど忘れていた)のネイチャーフォトも展示されているのに、それとは組み合わされていなかったり。沖縄で初めて見た時の印象はまだ残っているだけにちょっとがっかり。袋が潰れかけていたんですが、あれは意図的だったのか。'Dessert Project'の2作品を見れて良かった。
内海聖史さんの大型の作品は先日MOTの「屋上庭園」で拝見させてもらっていて、それと比べてしまうとだいぶ無理やり押し込んでしまっているような、窮屈な感じ。展示室の天井高がそもそも無いというのもありますし、ガラス張りの展示ブースにはガラス窓の上部を下がり壁がふさいでいるので距離を取って眺めると上が欠けてしまうということもあります。
他には付属のレストランが昼間っからビールあおって打ち合わせらしきことをしているらしいワイシャツ姿の3人組ばかりに注意がいっていて、他の客がほったらかしだったとか、静岡駅と新静岡駅の間が普通に設計されてりゃ10分も歩かないだろうというところなのにアクセスが悪くてぐるぐる歩きまわるハメになったりとか、もう坊主憎けりゃ的に気持ちがささくれてしまった。
ただ、今ロビーに展示されている草間彌生《水上の蛍》は合わせ鏡に空間に点光源を散らしている単純な仕掛けなんだけど、その〈蛍〉の空間が無限遠に広がり圧倒される。見ようによっちゃ、そりゃ遊園地のアトラクションみたいという言い方もできると思うけど、草間彌生作品のひとつの特徴である水玉がこの光の乱舞に変換されたのかなあと思うと少しだけ作家が見ている世界を垣間見れたような気がしました。